【井の頭公園の生き物たち 第26回】ウキゴリ(絶滅か、復活か)

2019.09.27

全長13cmに達する面長のハゼです。メスが岩などの下面に産み付けた卵をオスが孵化まで守ります。誕生した仔魚は海に下り、ある程度成長してから、群れで川を遡上します。初夏の荒川水系の川で、上流へ向かう稚魚たちが途切れることなく続く光景を見たことがあります。

井の頭池でウキゴリの姿を毎年見られたのが、水生物園の白鳥池でした。5月か6月、何匹もの稚魚が水中に浮かんでいるのがガラス壁から見えるのです。多くのハゼが少し成長すると底生生活に移るのに対し、この魚は稚魚がかなり大きくなるまで浮遊生活を続けます。「浮きゴリ」という名の由来です(ゴリとはハゼのことです)。

その白鳥池のウキゴリが絶滅したようです。2015年は稚魚が確認されず心配していたのですが、今回の弁天池のかいぼりで1匹も見つかりませんでした。白鳥池は弁天池の一部です。ふわふわ浮かんでいる稚魚はオオクチバスなどに捕食されやすく、生存率が低そうです。白鳥池のウキゴリは海へ下らずに成長していたと考えていますが、かいぼりのために弁天池とボート池の間に仕切りができたことは、新たな稚魚の遡上を難しくしたかもしれません。

2014年1月のお茶の水池などのかいぼりでも、ウキゴリは1匹も見つかりませんでした。昔から井の頭池にいたこの魚が全池で絶滅となりそうでしたが、幸い、2015年にはお茶の水池の網に何度も入るようになりました。2014年6月に白鳥池に現れた稚魚を20匹ほど捕獲して、かいぼりで外来魚が減ったお茶の水池に放流したことがあり、それが獲れたのかもしれません。しかし、ひょうたん池でも稚魚が何度か網に入ったことから、神田川から遡上してきたものが多いと考えています。神田川も改修が行われ、小さな滝(段差)ができるなど、昔とはだいぶ違う川になりました。しかし、池と川と海の連続性は、その間を行き来して命を全うする生き物には、昔も今も欠かせないことです。

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

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(いのきちさん26号 2016年1月1日発行 掲載)