【井の頭公園の生き物たち 第31回】アカシデ(高齢木の魅力と悩み)

2019.11.01

アカシデとイヌシデは御殿山の雑木林に多い高木です。ソロノキと総称されたそうで、昔はその名札が付いていました。シデとは、枝から垂れ下がる果実の房を、しめ縄などに垂らす四手に見立てたものです。果実には小さな苞葉があり、風に運ばれます。同じく雑木林を構成するコナラやクヌギなどと比べて、葉が薄くて小さく、樹形もより自在なので、雑木林に明るく軽やかな雰囲気をもたらします。イヌシデは芽吹きが黄緑色ですが、アカシデはその名の通り赤色を帯びます。晩秋には、上の写真のように、アカシデは紅葉し、イヌシデは黄葉します。アカシデのさらなる魅力は、幹が太くなるにつれて複雑に隆起し、彫刻のように芸術的になることでしょう。幹も枝ぶりも、年を重ねるほど趣が増します。

じつは、左の写真は12年前のものです。このような自在な枝ぶりは、残念ながら今はあまり見られません。アカシデに限らず、高齢な木を元気な太い枝でバッサリ切ってその先の枝を減らす強剪定が行われているからです。毎年新枝を出して生長し、日が当たらなくなった下方の枝は枯れて風などで落ちる、というのが樹木の正常なサイクルなのですが、多くの人がその下を通る公園では許されません。細い枝を毎年丁寧に剪定するのは、木が多すぎて無理があります。強剪定された木は、生き残ろうと、残った枝や幹から細枝をたくさん出し、多数の葉を付けます。樹形が悪くなるだけでなく、樹勢が衰えて枯れてしまう木も少なくありません。

昔は、許可された農家が御殿山の雑木林を10年ほどの間隔で薪炭用に伐採していたため、木々が若く保たれていたそうです。今後も、来園者が通る場所の木々は太くなりすぎる前に更新させるべきと思います。木が細ければコストが安くて済みます。一方、雑木林の趣や生き物の暮らしのために、立ち入り禁止の場所には樹齢を重ねた大木を残してほしいものです。多様な環境は多様な生き物を育みます。

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

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(いのきちさん31号 2016年11月1日発行 掲載)