【私と井の頭公園 第20回】『いきもの広場』は僕のやりたかったこと 成島悦雄/東京都井の頭自然文化園 園長

2020.02.25

井の頭自然文化園の成島悦雄園長が、この3月で定年退職となり園を去る。優しいお人柄と、動物たちを見守る温かくも好奇心あるまなざしが印象深い人で、残念である。

生まれは栃木県なんですが、ものごころついた時は東中野で暮らしていました。まだ周りは畑ばっかりで、赤胴鈴之助や月光仮面の時代ですよ。

高校の頃に動物に興味を持ち始め、大学は獣医学科です。そこで動物行動学の権威である日高敏隆先生の授業を受けたんです、「生き物そのものの生き様がある」という視点ですね。「狼は狼同士の戦いに負けると、負けた方が首を差し出すんです。ところが勝った方は殺さない。なぜか。種を守るわけです」。こんな話を聞くと、がぜん面白くなって動物に興味を持った訳です。そんな野生の動物に会えるところはどこかなと、それは「動物園だ」(笑)、と思ったのですが、募集が少ないところなんですよ、でも運よく東京都に就職でき、最初の赴任は上野動物園でした。以来、多摩動物公園などいろいろ経験して、60歳の時に井の頭自然文化園に園長として着任したんです。

園長は大変ですね、苦情対応もしなくてはなりませんから、ここに来て腰が低くなりましたよ(笑)。5年間の思い出というと、70周年記念にめぐり合わせたことと、『いきもの広場』を作ったことですね。今の子供たち、特に都会の子はなかなか生き物と触れ合うことが少ないですよね、でも、人間は生き物を見つけたり捕まえたりすることが本能としてあるんですね、そういうことを子供のときに体験させたいのです。ヒトを含め、生き物たちの命がつながっていることをいつか分かってもらえればうれしいですよね、そのきっかけになる場所が出来たことが一番の思い出かな。実はこれ、自然文化園の本来のねらいなんですね、開園時につけられた「文化」は「教育」という意味があり、ここは自然の教育園なんです。僕のやりたかったことはこういうことなんだと改めて思いました。

成島悦雄 東京都井の頭自然文化園 園長
聞き手・写真 川井信良 株式会社文伸 代表取締役社長

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(いのきちさん20号 2015年1月1日発行 掲載)