【私と井の頭公園 第31回】江戸幕府の生命線だったことを誇りに 友野智子/友野国際特許事務所所員、世界遺産アカデミー認定講師

2020.05.12

井の頭恩賜公園開園100周年を記念した「井の頭公園検定」が今年も12月に開催される。今まで4回の受験者総数は661人、そのうち3級か2級に合格した人が延べ641人、そのうち1級まで到達した合格者はわずか19人である。その1級合格者がチーム「あか井の」をつくり、公園の魅力を伝えるガイドとして活躍し始めた。その一人、友野智子さんに話をうかがった。

「いのけん」を知ったのはバドミントンでアキレス腱を断裂してしまい、そのリハビリで井の頭公園をウォーキングしていた時でした。公式問題解説集に文化や歴史のことが載っていたので、興味を持ったのです。もともと歴史が大好きで大学で歴史を専攻、イギリスの立教英国学院で歴史を教えた経験があります。

1997年イギリスから中国に香港島と九竜半島が返還されました。あれっおかしい。香港島はイギリスに割譲されたのですから、返すべきは租借した九竜半島だけなのに。サッチャーも返す気はなかったようです。ところが鄧小平が「それなら水をとめます」とすごんだとのこと。本土から水を引いている香港、返さざるを得ませんでした。遡ること1967年の第三次中東戦争、イスラエルはエジプトからシナイ半島を、シリアからゴラン高原を奪いました。その後シナイ半島は返還しましたが、ゴラン高原は今でも占領しています。ここはヨルダン川の水源、シリアに抑えられ水を止められたら、多くのイスラエル人が入植しているヨルダン川西岸は干上がってしまうからです。治水は政治上の大きな課題、現代でも紛争の原因となります。

そして井の頭池。ここは江戸の飲料水の水源、神田御上水の源だったのです。徳川家康が、数ある水源候補から「関東随一」と評価し選んだのでした。井の頭池は、260年の長きにわたる平和を実現した江戸幕府のまさに生命線だったのです。幕府はさぞ厳重に管理したことでしょう。私たち地元民はこの史実をもっと誇りにして、池を大切にしていかなければと思います。

井の頭公園は水と緑がいっぱいで、それだけでもとても魅力的ですが、池の歴史的価値と池の守り神弁財天は「公園随一」です。

友野智子 友野国際特許事務所所員、世界遺産アカデミー認定講師
聞き手 川井信良 株式会社文伸 代表取締役社長

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(いのきちさん31号 2016年11月1日発行 掲載)