井の頭公園の生き物たち|第15回「ニホンイシガメ」

2018.02.27

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』15号 2014年3月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

最大の朗報

日本固有種のカメです。メスは甲長20cmほど、オスは13cmほどになります。クサガメとの違いは、黄褐色の背甲に盛り上がった筋が1本(クサガメは3本)あり、後縁がギザギザしていること、首や頭が細く模様がないこと、尾が長いことなどです。

環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種、東京都では絶滅危惧IA類(極めて絶滅の危険性が高い種)に指定されています。数が減っている理由は、生息適地の減少、外来種ミシシッピアカミミガメの生息・採食・繁殖に対する圧力、江戸時代以降に渡来した近縁のクサガメとの交雑などです。小魚、エビ類、水生昆虫、水草などを食べる雑食性で、陸上でも採食することがあるため、近年分布を広げている外来動物アライグマに襲われる例も増えているそうです。

井の頭池でも間違いなく絶滅危惧IA類で、成体を見かけることもまれで、幼体(子ガメ)は近年まったく見つかっていませんでした。ところが、かいぼりの準備期間中に、我々は子ガメを相次いで2匹発見しました。今回のかいぼりで明らかになったいろいろなことのうち、いちばんの朗報ではないかと思います。

子ガメが見つかったのは、ひょうたん池のアサザなどが生えている場所です。ニホンイシガメの幼体が暮らすには、水生植物が茂る浅い水域が必要なのです。そういう場所なら親ガメが産卵のため陸に上がるのも楽でしょう。かいぼりでは、他のカメ類が夏に見かける数のほんの一部しか捕獲されなかったのに、ニホンイシガメは見かける数より多い6匹の成体が発見・保護されました。このカメが耐寒性に優れていることと、冬眠場所が他のカメとは少し違うからではないかと考えています。

捕獲された成体は弁天池に放されました。春以降に再捕獲できれば、かいぼりが終わった池に戻します。井の頭池の将来を担う子ガメたちは現在大切に飼育されており、十分に暖かくなってから元の場所に戻される予定です。

 

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』15号 2014年3月1日発行 掲載)

ニホンイシガメ

見つかった子ガメ


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