井の頭公園の生き物たち|第17回「アメリカザリガニ」

2018.03.06

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』17号 2014年7月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

手ごわい人気者

原産地は米国南部ミシシッピ川流域の湿地帯。それと似た環境の、浅く流れが少ない水域を好みます。1927年に食用蛙の餌として鎌倉に持ち込まれ、日本には水田があったため、短期間に全国に広がりました。在来種のニホンザリガニは元々東北以北にしかいないので、井の頭のザリガニは赤くなくても小さくても皆アメリカザリガニです。

子供には大人気で、ザリガニと遊んで育った人は昔から多いのですが、生態系への大きな害が認識されるようになったのは最近のことです。ザリガニは雑食性で、昆虫などの水生動物を捕食し、水草を食べたり切ったりします。泥に穴を掘るため、水を濁らせたり水漏れを引き起こしたりもします。貴重な動植物を絶滅させてしまうことがあるのです。すでに全国に広がっているため、指定は要注意外来生物止まりですが、他の場所に放すことは慎むべきです。

ザリガニは泥に深い穴を掘って隠れ、少しの湿り気があれば生きていられるため、かいぼりでは56匹しか駆除できませんでした。最大の天敵オオクチバスを除去したのでザリガニの激増は必至です。井の頭池に水草を増やすには、今後ザリガニの数をいかに抑え込むかが課題です。

ザリガニは夜行性なので、水深の浅いひょうたん池に多数のワナを設置して駆除を行っています。6月17日までの2カ月間で2,400匹を捕獲しましたが、獲れる数があまり減りません。神田川やボート池から補充されてくるようです。ザリガニは身体が濡れていれば陸上を移動できます。我々の努力もむなしく、浮葉植物のアサザは葉をほぼすべて切られてしまいました。

ザリガニの卵と孵化した子供はメス親の腹脚に付き、しっかり守られて成長するため、ほとんどの卵が小さなザリガニに育ちます。その出現は初夏と秋です。大量出現は阻止したいのですが、見通しは明るくありません。井の頭池にいる在来の天敵、ナマズ、カメ、ゴイサギなどの活躍にも期待したいところです。

 

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』17号 2014年7月1日発行 掲載)

アメリカザリガニのオス

子供を抱えたメス


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