井の頭公園の生き物たち|第25回「トキワツユクサ」

2018.04.03

『いのきちさん』過去記事紹介(『いのきちさん』25号 2015年111日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

「1×1運動」開始

井の頭池の一角「お茶の水」のツツジを覆い尽くしていた草です。みずみずしい葉と可憐な花が歴史ある場所にふさわしいと思われたかもしれませんが、じつは昭和初期に渡来した、南アメリカ原産の外来種です。外来生物法ではノハカタカラクサという名前で「要注意外来生物」に指定され、環境省が2015年3月26日に発表した「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」にも「重点対策外来種」として記載されています。(このリストの策定により、外来生物法の要注意外来生物は発展的に解消されました。)

我々は常緑のツユクサだとすぐ分かるトキワツユクサという別名を採用しています。地面に茎を這わせて一面に広がり、冬も枯れない葉が光を遮るので、他の植物が生えられません。お茶の水のツツジも瀕死の状態でした。庭のグラウンドカバーとしては優秀ですが、自然界に逸出すると植物の多様性が大きく損なわれます。お茶の水の一帯にはこの草が広く繁茂しているため、林床は単調です。園内のあちこちにも見られ、広がりつつあります。お茶の水のものは結実しないタイプですが、種子ができて分布拡大が速いタイプも井の頭公園に分布しています。

根が浅いので除草は容易ですが、根絶するのは簡単ではありません。茎がプチプチと簡単に切れるため、かけらが残りやすく、その節から根と枝が出て再生します。茎の一片も残さないよう丹念に拾い、その後も時々見回って、再生していたら抜き取ればよいのですが、遠くて広い雑木林では無理かもしれません。

井の頭公園はもう少し目が届きやすいので、我々は外来魚調査活動のついでに、有志が1回に1m×1mの区画ずつ、30分ほどかけて丁寧に除草する試みを始めました。そんなペースでは公園全体の除草はとても無理ですが、池の外来魚問題が今では広く認識され、解決への大きな流れができたように、外来植物問題にも理解と協力が広がることを目指します。

 

田中利秋 井の頭かんさつ会
井の頭かんさつ会代表。毎月自然観察会を開催。池の外来魚問題にも取り組む。

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(『いのきちさん』25号 2015年11月1日発行 掲載)

再生中の一片


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