井の頭自然文化園の動物たちと飼育員|その15「ツクシガモと東條裕子さん」

2019.01.15

「いのきちさん」過去記事紹介(いのきちさん35号 2017年7月1日発行 掲載)
―2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞「いのきちさん」。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

白・茶・黒と三毛猫のような羽のツクシガモは、カモには稀なオスとメスが同色・同柄。オスのほうがやや体格がよく、春先の繁殖期にはくちばしの赤味が増し、オスだけにあるくちばしのつけ根のコブが膨らみます。ヨーロッパや中国から九州地方に渡ってくる冬鳥で、名前の由来は「つくしんぼ」でも「尽くし」でもなく、九州の古称の「筑紫」です。

ところが「尽くし」を思わせる性質があります。「ペアになったら絆が深いんです。メスが巣作りをしたり、抱卵したりしているときに、オスは見張りをするし、子育ても一緒。水鳥には珍しいんですよ」と飼育員の東條裕子さん。絆が深すぎる面も。「ペアはそれ以外に対して攻撃的になります」。そのため、3組のペアをそれぞれ離れた展示場で、ペアのいないカモはバックヤードで飼育しています。

5月にヒナが誕生したペアは、隣接する展示場に暮らす一回り小さいキンクロハジロさえ気にいらず、肩を怒らせて威嚇の態度をとります。片やキンクロハジロはのんびりと知らん顔です。

このヒナは自然文化園では久しぶりの自然繁殖で生まれました。人工ふ化で誕生したヒナもいて、東條さんはこまめに体重を測ったり、育ち方の差をみたりと、2羽の成長を見守っています。

 

取材:小田原 澪(おだわら みお) 編集者・ライター。フィールドは多摩。三鷹市在住

 

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(いのきちさん35号 2017年7月1日発行 掲載)


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