井の頭自然文化園の動物たちと飼育員|その16「ホンドギツネと森翔生さん」

2019.01.18

「いのきちさん」過去記事紹介(いのきちさん36号 2017年9月1日発行 掲載)
2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

「狐の嫁入り」に「きつねうどん」、「狸と狐の化かし合い」など、数々の言葉や民話に登場するキツネ。でも目撃情報を聞くことはほとんどありません。飼育員の森翔生さんは「キツネはタヌキより人里離れた森のほうに暮らしています。それに神経質な動物なんです」と言います。

本州、四国、九州に生息するホンドギツネが井の頭自然文化園に2頭います。保護されて、文化園にやってきました。5月に来園した2歳のメスは、展示場の隅っこの岩場に張り付くようにして1日を過ごします。「夜行性ですけれど、この子はまだ緊張していて、日中ずっと起きています。私の前でエサを食べるようになるまで、1ヶ月半かかりました」と森さん。古株の14歳のメスは余裕しゃくしゃく。朝、展示場に出そうとしても、気が乗らない日は耳だけ動かして様子を探りつつ、顔は伏せたままにするのだとか。「キツネなのに、狸寝入りするんです」

野生では、春は小動物、夏は虫、秋は果物など、季節の産物を食べるけれど、飼育下では果物より断然肉類が好き。「音もなく歩き、気づくと近くにいることがあってびっくりします。イヌ科だけれど、ネコみたいです」。馴染み深い在来種だからこそ、本物の生態を見て、自然環境に思いを馳せてほしいと、森さんは考えています。

 

取材:小田原 澪(おだわら みお) 編集者・ライター。フィールドは多摩。三鷹市在住

 

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(いのきちさん36号 2017年9月1日発行 掲載)


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