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いのきちさん 過去記事

【井の頭自然文化園の動物たちと飼育員 第6回】タンチョウと野本寛二さん

ツルと聞けば誰もが知っている存在のタンチョウ(丹頂)。名前は「赤い頭」という意味で、羽毛のない頭頂部からは、くっきりと赤い地肌がのぞきます。

井の頭自然文化園にはオスとメス1羽ずついて、見た目には区別がつきません。身長約130cm の優美な立ち姿や、昔話の「鶴の恩返し」などの印象から、たおやかな性格を想像してしまうけれど、「抱卵中のオスは凶暴なんです」と飼育員の野本寛二さんは打ち明けます。

今年の春、2羽は同居を始めて、2つの卵が産まれました。有精卵かどうかを確かめるために、野本さんは何度も巣に近づこうとしましたが、「蹴られたら怪我をするし、オスは首を伸ばして、私のひたい辺りにくちばしを向けて威嚇するんです。掃除もなかなかできなくて、オスが卵を温めているすきに、巣から離れたところをささっと…」とトホホ顔。小屋の前を横切りたいだけでも、わざわざ遠回りをするほど、野本さんはオスを怒らせないように気遣ってきました。

転卵したり、温めたり、2羽が交代しながらかいがいしく卵を世話する様子は人気を集めましたが、ふ化する目安の35日を過ぎても変化がなく、けっきょく無精卵だったことがわかりました。2 羽の相性はよく、いまも仲良く同居しています。

小田原 澪 編集者・ライター
フィールドは多摩。三鷹市在住。

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(いのきちさん25号 2015年11月1日発行 掲載)