井の頭自然文化園の動物たちと飼育員|その7「アジアゾウと宮路良一さん」

2018.12.14

「いのきちさん」過去記事紹介(いのきちさん26号 2016年1月1日発行 掲載)
2011年11月から2017年11月にかけて刊行された、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞『いのきちさん』。ご愛読くださっていた方々の声にお応えし、掲載当時の記事をご紹介していきます―

井の頭自然文化園一の巨体で、日本最高齢のアジアゾウ、はな子。飼育員の宮路良一さんは、はな子を担当して3年目。昨年4月に4人チームのチーフを前任者から引き継ぎました。

まだ屋外にいたいはな子を「おーい、おかえりー」のひと声で檻に呼び戻したり、つい好物のパンや甘いものから食べてしまうはな子に、必要な栄養分を含んだ蒸しニンジンを口まで運んだり。厚い信頼関係は、じっくり時間をかけて育んできたといいます。「距離感を縮めようとして焦ってはダメ。初めは、そのうちはな子が認めてくれるだろうと、大きく構えていました。だんだん鼻で僕の体に触れることが増え、おとなしい目をして、いい時間を共有できているなあと感じられるようになって、今があります」

チームの全員が同じ立場で、責任感を持って飼育に当たることが、はな子にはもちろん、飼育員の身を守るためにも大切だと説きます。「チーフの務めは、情報を伝えること。冗談を言って和ませるし、おやつの差し入れもします」と気遣いを忘れません。

どんな気分の日でも出勤した瞬間に気持ちを高揚させて、はな子やチームのメンバーには穏やかに接します。「僕はアクター」がモットー。ベテランの自信が垣間見えました。

 

取材:小田原 澪(おだわら みお) 編集者・ライター。フィールドは多摩。三鷹市在住

 

本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。
(いのきちさん26号 2016年1月1日発行 掲載)


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